
テルモヒューマンクリエイトのオウンドメディア運営事務局です。今回は代表取締役社長の本庄正治さんにインタビューしました。
本庄さんは学生時代、ソーシャルダンスに打ち込み、大学在学中に相手を思いやる気持ちを学んだそうです。真剣になればなるほど意見の対立は起きます。そんな中で、「どれだけ早く負けるか」、つまり相手の感情に寄り添って、できるだけ早くウィンウィンの状況をつくるか、がペア円満の秘訣になるとのこと。
平凡な大学生だったと振り返るものの、テルモ入社を決めた理由が「工場で働く人の心に染み渡るパーパス(社会的意義)を一瞬のうちに理解できたから」と、常に人の気持ちや志を観察し尊重してきた青年だったことがうかがえます。
テルモ入社後は、職業人生の半分を海外で勤務し、各国の多種多様な上司の下でキャリア積んできました。「これまで上司から受けてきた恩を、若手へとペイフォワード(恩送り)していきたい」と語る本庄さんは、これからTHC※をどう率いていくのでしょうか。テルモグループが掲げるグロースマインドセットにも触れながら深くお話しを伺いました。
人の能力はいくつになっても伸び続ける。失敗を恐れず、一人ひとりの希望や志を追求できる組織や環境を創り上げる。
―― 1995年4月に新卒でテルモ株式会社(以下、テルモ)に入社されたと聞きました。テルモを選んだ理由について教えてください
実は、採用試験を受けるまでテルモのことは名前くらいしか知りませんでした。当時のテルモは今ほどには一般に名の通った企業ではなく、大学生など医療に関わる人以外にはあまり知られていない存在でした。大学では外国語を専門していましたので、海外で買い付けをすることができるような仕事がある、重厚長大なエネルギー系の企業などを志望していました。採用試験を受けたきっかけは、大学ゼミの先生からの勧めです。「だめでも練習になるかな」くらいに思っていました。
ところが、内定が出る直前だったと思います。当時の採用課長に誘われて愛鷹工場を見学する機会をいただきました。工場の現場で「患者さんの体に入る製品だから万が一があったら駄目なんだ」と真剣に働く皆さんを見て、テルモのパーパスが胸に刺さり、一瞬で理解することができました。「ここならやっていけそうだ」と、即入社を決めたというわけです。
今でこそテルモもスマートになり、パーパスを社外へ向けて発信するようになりましたが、当時のテルモは不器用で伝えることはあまりできていなかったように思います。平凡な大学生だったのでパーパスやバリューを考
える前に、ネームバリューで決めていたと思います。工場見学で、心に染み渡るほどのパーパスを目の当たりし、その姿に心を動かされていなければ今の私はありませんでした。
―― 入社後は海外勤務を多く経験されたと伺っています。大学で専攻された語学力を認められたからでしょうか
大学で語学を専攻しましたが、残念ながら勉強は向いていなかったらしく、授業ではかなり苦労しています。そのレベルですので、語学力は不十分でした。海外勤務の経験を積めたのは、能力を高く評価されたわけではなく、「海外へ行ってみたい」と言い続けたからではないかと思います。
もちろん全てが叶ったわけではありませんが、振り返るとインドネシア、ベトナム、シンガポールなど、職業人生28年のうちの半分を海外で過ごすことになりました。これは、アソシエイト一人ひとりの希望やキャリアの方向性を、上司が汲んで支援してくれる文化があったからだと感謝しています。今度はペイフォワード、つまり、上司が支援してくださったように、私が若手の夢を叶える番として、しっかりと恩送りをしていきたいと願っています。

―― テルモヒューマンクリエイト(以下THC)社長の他に、テルモの人事部長としての役割もあります。兼任しながらの舵取りになりますが、どのように進めていく予定ですか
幸いなことにTHCには経験値が高く、個性も豊かな素晴らしいリーダーが揃っています。私が直接先頭で引っ張る必要はなく、テルモの全社戦略、人事戦略との整合性と、社会的に間違ったことやお客様が喜ばない、アソシエイトが喜ばない方向に行かないように注意だけして、後は皆さんの多様な才能が発揮できるように任せて応援していこうと考えています。
THC社長とテルモ人事部長の役割は、4月にアサインメントを受けた後、実質的に7月から携わってきました。この半年の間で、テルモの人事部の仕事も含めて全体的な流れが見えてきたところです。そこで改めて思うことは、THCがテルモグループ全体にインパクトのある人的ソリューションを創ることができる、とても面白い組織であるということです。これまでも面白い組織でしたが、今後はさらに面白くなります。
これまでの経営は、売上や利益率など、お金の話が殆どでしたが、数年前からは非財務諸表、つまり、お金に表せない企業価値に焦点が当たるようになってきました。その最たるものが人です。人こそが企業の力の源泉であり、そこが正確に見えてこないと、会社の良し悪しがわからないという人的資本経営が重視される時代です。テルモグループ全体の人事制度も大きく変わらざるを得ません。このような時代の中で、テルモグループの中でも先進的な取り組みを真っ先に行えるのがTHCです。どんどん実験を重ね、人的ソリューションを創り上げていきたいと考えています。

―― 実験というと、テルモグループが掲げている「グロースマインドセット」にも関わりますね
大きく関わってきます。グロースマインドセットは「能力はいくつになっても磨けば伸びるし、自らが望めば性格や行動は変えることができる」という考えです。フィクスドマインドセットと呼ばれる「人に備わる能力や性格は与えられたもの、先天的なものであるから変わることがない」という考え方とは真逆になります。
さらに言うと、グロースマインドセットを深めていくためには、鍵となる三つの柱が必要となります。まずは「Value progress(バリュープログレイス)」。成長することに価値を置くという姿勢です。二つ目は「Experiment(エクスペリメント)」。成長するための実験をおこなう姿勢です。三つ目は「Learn from others(ラーンフロムアザーズ)」。他者からのフィードバックを聞く、他者に学ぶ姿勢です。
とりわけ、現代のように先の見えない予測困難な社会においては、二つ目の「Experiment」が重要になりますが、失敗を恐れるあまり実践が難しいのです。これからは「小さい実験を繰り返しながら感触を掴んでいく、掴んだら思い切って打って出る」といった、失敗を恐れすぎない行動をいかに早く回していくかが、
企業にとっても個人にとっても成功の鍵となる時代だと思います。
THCにはそれを理解したリーダーが多く、これまでも実験的な取り組みを行っています。例えば、障がい者雇用については、障がい者にとってより良い就労機会を創り上げていくために特定子会社を作り実証実験を重ねる予定です。
THCの強みは、テルモ本体よりも小ぶりでフレキシブルに動けることです。グロースマインドセットを深く追求していくためにも、小さな実験を数多く回し、テルモグループ全体にもインパクトを与える人的ソリューションを創っていく存在になっていきたいと考えています。
―― アソシエイトとともに本庄さんもグロースマインドセットで伸びていきますか
50半ばになりましたが、私自身も成長を日々実感しています。若い頃は、50代にもなると、能力が完成されてしまい、伸びることはないと思っていましたが全然違っていました。7月にTHCの社長とテルモの人事部長を始めてから、毎日がパニックの連続でボロボロにはなるものの確実に成長していることを感じています。
6ヶ月経ってみて「なんとかなる」と思えるようになりましたし、自分のやりたいことが少しずつ見えてもきました。今後の6ヶ月間では、今よりチャレンジングなことに取り組んでいる自分の姿が想像できるようにもなりました。このように50代の私が伸びているのですから、20代、30代、そして40代のアソシエイトが伸びないわけがありません。
まずは、自分自身をよく見つめ直してもらい、自分が何をしたいのか理解するのがいいと思います。その上で、機会を掴むために思い切り仕事してもらえればいいかなと。もちろん、過重労働ではなく、健康的な範囲の中で、惜しみなく力を発揮して欲しいと思っています。

―― THCはテルモグループのグロースマインドセットを体現する会社になりそうですね。アソシエイトやこれからアソシエイトになる方にメッセージをお願いします
THCでは、グロースマインドセットを体現しつつ、さらにアソシエイトのウェルビーイングを達成できるように取り組んでいきたいと思っています。ウェルビーイングは、「幸せ」という言葉とは微妙に違っていて、理解が難しい言葉ですが、会社で働くという上で「よく在ること」だと考えています。「よく在ること」とは、健康や安心、経済的な安定に加えて、働くことの意義や目的をしっかりと認識できたり、正しいチャレンジに対して正しく努力できていると思えたりすること。さらには、それら全てが成果につながっていくプロフェッショナルライフを送れることです。
現場では、いまもなお「患者さんの体に入る製品だから万が一があったら駄目なんだ」と真剣に働くアソシエイトを見ることができます。私個人の想いとしても、そんな志を高く持つアソシエイト一人ひとりの希望を叶え、キャリアを支援してウェルビーイングを達成するお手伝いをしていきたいと願っています。
テルモグループのアソシエイトは「医療を通じて社会に貢献する」という理念に共感し、高い志を持ち、惜しみなく力を注いでくださる方々です。
人の命に関わる仕事は決して楽な仕事ではありませんが、
グロースマインドセットとその3つの柱「Value progress」「Experiment」「Learn from others」を大切にして、アソシエイト、また、これからアソシエイトになる皆さん全員でグロースマインドセットを体現できる会社へと深めていく、そしてウェルビーイングを達成していく。そんなTHCになっていきますので、ぜひ皆さんも、自身のやりたいことを明確にし、思う存分力を発揮してもらえれば嬉しく思います。

【 編集後記 】
本文では触れていませんが、本庄さんは、グロースマインドセットに加えて、組織づくりについても熱心に語ってくれました。特に、「組織が最大限の力を発揮できる状態にしていく」という考えを大切にしているそうです。
ベトナムで営業オペレーションを担当した際、本庄さんは困難な状況に直面しました。言葉が片言しか話せず、病院の情報もわからず、ネットワークや代理店のつながりもありませんでした。しかし、本庄さんはそこにいる人々の才能、スキル、ネットワークを最大限に活用し、組織として成果を上げることに取り組むことで、困難を乗り切ることができました。このような経験のおかげもあって、本庄さんにとって「組織が最大限の力を発揮できる状態にする」というのが常にゴールになっているそうです。
「人をちゃんと理解して、その方々がのびのびと力を発揮できる組織作りを大切にしてきましたし、これからもそうしていきたい」。そう語る本庄さんにとって、テルモグループが掲げるグロースマインドセットという考え方は、本庄さんの「よく在ること」、つまりは本庄さんのウェルビーイングそのものであると感じた取材となりました。
(※)THC=テルモヒューマンクリエイト株式会社
代表取締役社長
本庄 正治 - Honjou Masaharu1995年テルモ株式会社入社。
テルモ株式会社 人事部長およびテルモヒューマンクリエイト株式会社 代表取締役社長。チャレンジ精神溢れる当時のテルモに惹かれて1995年新卒入社。アジアのグループ会社を中心にキャリアを積み重ね、2023年人事部長、2023年テルモヒューマンクリエイト代表取締役社長に就任。全員でウェルビーイングを達成できる組織作りを目指しながら、自らもグロースマインドセットで成長を目指し続ける。